
テント倉庫は密閉空間で、熱を遮る壁や屋根がないため、真夏の日中は室内が40℃以上になることがよくあります。このような状況では、作業員の健康と安全のために、倉庫内の温度管理が欠かせません。この記事では、テント倉庫を涼しく保つための具体的な方法をご紹介いたします。ぜひ参考にしてください。
夏場のテント倉庫内は40℃を超える
テント倉庫は、軽量鉄骨フレームにシート膜を被せた簡易的な建造物で、コストパフォーマンスに優れた保管施設として広く利用されています。しかし、この構造的特徴が夏季の温度管理において重大な課題を引き起こしています。
近年の日本の夏は、35℃を超える猛暑日が常態化しており、このような気象条件下では、テント倉庫内の温度は外気温よりもさらに上昇します。これはおもに、テント素材の断熱性能が一般的な建築物と比べて低く、太陽光を直接受けることで温室効果が生じやすいためです。
また、テント倉庫は通常、保管物の品質維持のために窓が少なく設計されており、自然換気が制限されています。この構造的特徴により、一度上昇した室内温度が下がりにくく、外気温が35℃程度であっても、内部温度は40℃以上に達することがあります。
このような高温環境は、保管物への悪影響だけではなく、作業員の健康にも重大なリスクをもたらします。とくに熱中症の危険性が高まり、労働安全衛生上の深刻な問題となっています。
実際、総務省消防庁の統計によれば、熱中症による救急搬送者数は年々増加傾向にあり、作業現場での事故も後を絶ちません。具体的には、令和6年5〜9月に熱中症で救急搬送された人数は9万1,467人であり、この数字は2008年の調査開始以降、もっとも多い搬送人数となっています。
次に、熱中症が発生した場所を見てみましょう。熱中症の発生がもっとも多いのは住居で3万7,116人(38.0%)です。
ついで、道路での発生が1万8,576人(19.0%)となっています。不特定者が出入りする屋外(競技場や屋外駐車場、イベント会場など)での発生は1万2,727人(13.0%)で、道路工事現場や工場、作業所などでの発生が9,870人(10.1%)となっています。
ここからいえるのは、熱中症の人数が年々増加していることと、テント倉庫のような作業場でも一定数の熱中症が発生していることです。
テント倉庫における暑さ対策とは
テント倉庫は、設置のしやすさやコストパフォーマンスのよさから、さまざまな用途で活用されています。しかし、その構造上、夏場は内部が高温になりやすく、作業員の健康リスクが懸念されます。
40℃を超えることも珍しくないテント倉庫内では、熱中症対策は喫緊の課題といえるでしょう。テント倉庫内の暑さ対策として、まず重要なのが「換気」です。
テント倉庫は密閉空間になりがちなので、効果的な換気システムの導入が不可欠です。屋根部分に設置するベンチレーターは、強制的に換気を行うことで、倉庫内の熱気を効率的に排出します。自然の風を利用する自然換気タイプのベンチレーターも有効です。
また、テント生地を二重にする「二重張り」も効果的です。二重構造にすることで空気層が生まれ、断熱効果を発揮します。さらに、アルミサッシ窓を設置することで、通気性を確保し、換気効率を高めることも可能です。
テントの妻面など、適切な場所に開口部を設けることも有効な手段です。換気とあわせて、局所的な対策も重要です。スポットクーラーは、ピンポイントで冷風を送ることができ、作業場の温度を効果的に下げることができます。
また、空調服は、衣服内に風を送り込むことで、作業員の体感温度を下げ、暑熱による疲労を軽減します。強力な風を送風できる業務用扇風機も、体感温度を下げる効果が期待できます。
テント倉庫自体の遮熱性を高めることも重要です。遮熱機能を備えたテント生地は、太陽光を反射し、テント内の温度上昇を抑制します。
断熱材を壁や天井に追加することも、効果的な対策となります。さらに、気化熱を利用したスプリンクラーも有効です。水滴が蒸発する際に周囲の熱を奪うため、テント内の温度を下げる効果があります。
個人でできる対策を紹介
テント倉庫内での暑さ対策として、個人で実施できる対策について説明します。
まずもっとも重要なのが適切な水分・塩分補給です。暑い環境で作業する際は、のどが渇く前に定期的に水分を摂取することが大切です。
1時間に1回程度、コップ1杯分の水分を補給することを習慣化しましょう。また、大量に汗をかく場合は、スポーツドリンクなどの塩分も含む飲料を選ぶことで、失われた電解質も補うことができます。
次に、適切な服装の選択も重要です。汗をすばやく吸収し発散させる機能性素材の作業着を着用したり、空調服を利用したりすることで、体温上昇を抑制できます。帽子の着用も直射日光から頭部を守る効果があります。
また、個人で使用できる暑さ対策グッズの活用も効果的です。冷感タオルを首に巻いたり、保冷剤を身につけたりすることで、体感温度を下げることができます。
さらに、自身の体調管理も重要です。十分な睡眠を取り、アルコールの過度な摂取は避け、普段から体調を整えておくことが大切です。
暑さによる体調の変化にはとくに注意を払い、めまいや吐き気などの症状を感じたら、すぐに涼しい場所で休憩を取るようにしましょう。これらの対策を組み合わせることで、より効果的な暑さ対策が可能となります。
まとめ
今回はテント倉庫の暑さ対策について解説しました。テント倉庫は構造上、夏場は40℃以上になることも多く、作業員の健康リスクが高まります。対策として、ベンチレーターによる換気、テント生地の二重張り、スポットクーラーの設置などの設備面での対策が有効です。また個人でできる対策としては、適切な水分・塩分補給、機能性素材の作業着の着用、体調管理の徹底が重要です。これらの対策を適切に組み合わせることで、より安全な作業環境を実現できます。